暦年贈与
【2024年07月12日】
相談者「私は現在1億円の財産を所有しており、一人息子に全財産を引継ぎさせる予定です。生活費は年金で賄えるため、財産を今から息子に渡していこうと考えています。年間110万円までであれば贈与税はかからないということなので、毎年110万円贈与していく形で良いでしょうか?」
弊社ご提案「贈与税がかかる額で贈与をした方が良い場合もあります。最適な贈与額を検討しましょう」
相続対策でよく言われるのが“生前贈与”です。生前に財産を贈与して相続税の課税対象財産額を少なくすれば、それだけ相続税の負担が軽減されます。
生前贈与は貰い手一人につき年間110万円までは贈与税がかかりませんが、贈与税を払っても110万円以上の贈与した方が良いという場合もあります。これは相続税と贈与税で税率が異なるためです。
贈与税の税率が相続税の税率を下回るのであれば、生前贈与をした方が有利になります。
相続税と贈与税の税率を比較してみます。
※贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者が直系尊属より贈与を受ける場合
相続税より贈与税の方が税率は高く見えますが、贈与は複数年に分けて何度も行うことができます。そのため、相続で一度に課税されるよりも、複数回に分けて贈与し低い税率で課税される方が、税金の計算上は有利になります。
正しい生前贈与を行うことで、相続税の課税財産も相続税率も下がります。
今回のご相談の内容でシミュレーションをしてみましょう。
〈相談内容〉に基づくシミュレーション要件
·財産額1億円
·相続人は息子さん一人のみ、お孫さんはいない
·ご相談者様は68歳、平均余命の85歳まで17年間贈与できるものとする
·生前贈与加算は7年、贈与の期間は10年間とする
·特例贈与(子供が18歳以上で直系卑属)が適用できるものとする
·相続関連の特例は活用しない
シミュレーションの結果、年間400~500万円が最適な贈与額で、最大570万円程の節税効果が得られるという結果になりました。
本ケースでは贈与者の方にお孫さんがいませんでしたが、もしお孫さんがいれば、その方へも贈与することで節税効果を高めることが可能でした。
今回のご相談は、生前贈与について暦年贈与を中心にご案内しましたが、贈与額は贈与者の財産状況や贈与できると見込まれる期間、相続人の構成(配偶者の有無、受贈者の年齢など)により効果が異なります。また、大きな金額を一度に渡せる特例の活用も検討できます。具体的な対策は専門家に相談しながら検討することをお勧めします。